「竜の魔法」朗読:くまっこ B.G.M.:カシュウ
（収録『まほろば』著者:くまっこ イラスト:椎名麻子）
遠い国の
洞窟の奥深くに棲んでいる
竜だけが知
っ
ているという魔法を 教えてもらいに行くことにする
ドラゴンという名の竜は
洞窟でお姫さまと暮らしていて
お姫さまはドラゴンを愛していて
ドラゴンはお姫さまをやさしく守
っ
ている お姫さまを取り返しにくる
王様の側近も
名のある騎士も
偉い魔法使いも
貧乏な村人も
隣国の王子様も
みんなドラゴンの炎の息に
追い返されてしま
っ
た 「
お姫さま どうぞご無事でいて下さい」
と 水浴びを続けた侍女は
くるしい病を患
っ
て死んだ 王妃様は涙を流し続けているけど
まだ涙は涸れない
本当は涙の涸れる日を待
っ
ているのだけど 涙が涸れる日など来ないから
王妃様は永遠に涙を流し続けるのだろう
お姫さまを失
っ
た国は 緩やかな滅びの道を辿り
なくな
っ
てしまうだろうと 占い師は予言する
『
なくなる』
ということは 『
はじまり』
なのだと 分か
っ
た風な口をきいた占い師は 王様の手にかか
っ
て死んだ 占い師だけが
お姫さまの無事を知
っ
ていたというのに 占い師だけが
竜の声を聴けたというのに
◆
砂漠の果てに暮らす
占い師の末裔を訪ねに行く
時という概念のない
洞窟の奥深くに棲んでいる
ドラゴンという名の竜に逢うために
いまだお姫さまと
『
しあわせ』
という名の洞窟で暮らす ドラゴンに逢いにゆくよ
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