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でも
此処は兵隊の住んでる所なんでし
       
 その日もそろそろ夕暮れ時になろうかという時分
市街中心 
部近くに広大な敷地を持
ている正規隊の兵舎の門前で
守衛 
達とひとりの子供が何やら揉めているのが
道行く人の目を惹 
いていた
                        
あのな
坊主
傭兵
てのはな
正規隊の兵舎には入れない 
んだ
わかるか
                    
何処へ行
たら会えるんですか
         
 子供は
先刻
掏られた自分の財布を尋常ならぬ鮮やかな手 
際で取り返した
あの青い髪と瞳の少年であ
      

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  一                          
                             
 
誰かが
見ている
                 
 何となくそんな気がして
禎理
ていり
は背中の震えと共 
に振り向いた
                      
 しかし
禎理の瞳に映るのは
いつも通りの森の影
葉を落 
とした広葉樹やす
くと立
た針葉樹などのごち
ごち
と絡 
た木
の太い幹や
秋の風にさらされてさらさらと蠢く枯 
れかけの下草ばかり
自分以外の人の気配などはこれ
ち 
ない
                        

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影におびえる
                     
                             
宛 本庁 怪人対策室 室長殿              
  怪人ノ疑イ                      
   北部市分署マデ来ラレタシ
             
 射扇室長に出動要請がもたらされたのは昼過ぎであ
一 
世代前の思考機関が吐き出す鑽孔テ
プから起こした文面には 
簡明な用件と招集場所が記されている
怪人対策室に出動要請 
を出すにあた
てお決まりの
いわば書式にの
た定型文 
差出人は北部市分署の警保部北部課
          

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クレヨン                   
 貴方というひとは
名画を求めて世界中を回るくせに
幼い 
娘の描くクレヨン画には目もくれませんでしたね
でもいいん 
です
貴方は決して売れない画家に金を出し続ける転落人生だ 
私は娘の絵を売
てささやかに生活しているし
これが愛 
の差なのかしら
それとも別のものかしら
         
                             
 
階段                     
 石を積み上げては崩すのと同じように
砂漠のスケ
チを永 
遠に続けさせるのも重い刑罰の
つだ
囚人はある日
見 

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 そこらに乱暴に脱ぎ捨てた衣類を踏みつけながら
ドへ 
赴く
一歩踏みしめるたびに
衣服の下にある絨毯の柔らかな 
感触が素足の裏に伝わ
てくる
毛足の長い
高価な絨毯
本 
当なら今の身分の私には縁遠いもの
            
 ベ
ドの上には水煙草をふかして
食物
が運ばれてくる 
のを待つだけの男
                    
 この男の前で一糸纏わぬ姿になるのは何度目だろう
もはや 
心は氷のように冷えきり
何の感慨も沸いてこない
そのは 
ずだ
今夜は違
かつて恋だ
たものの残骸が目の前 
に現れてしま
た今日という日の夜は
遙か昔に投げ捨てた感 

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 集落中の人間が床につき寝静ま
た頃のこと
山風が湖面を 
揺らし
波音は絶え間なく響いていた
湖岸の草むらで鳴く虫
遠くの山からは鳥の鳴き声
毎夜同じ
夜の静けさである
  
 空の上では月が煌
と輝いている
月明かりが部屋を照らす 
中で
                          
おと
                      
 少女は一人
目を覚ました
               
 いつも通りの
夜の音であ
そのはずだ
しかしそ 
れに紛れて
異音が確かに聞こえてくるのである
ぱし
 
ぱし
と一定のリズムを刻む音は
水面を叩く櫂の音に似 

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