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「
おう、
庄太郎」
「
はい」
呼び止められて振り返ると
、
音五郎は人の良さそうな笑顔を 浮かべてこう言
っ
た。
「
沖田君が、
おまえさんによろしく伝えてくれとさ」
「
…
…
はい」
すぐに頷けなか
っ
た庄太郎に、
音五郎は眉をひそめてこう言 っ
た。
「
まだ気に病んでいるのか」
また夢を視た
。
また、
いつもの夢を視た。
気持ち悪い
。
他人の人生のフラッ
シュ
バッ
クなど、
誰が楽し めるのか
。
基本的に最後には死ぬのだ。
それを体験してしまう。
浅倉は目を覚ますとゲ
ッ
ソリとした顔を上げた。
「
顔色が悪いけど、
大丈夫かい」
声をかけられた
。
そして差し出されたハンカチが目に入る。
汗をかいていたわけではないが
、
善意を断るわけにもいかない。
浅倉はそのハンカチを受け取
っ
た。
「
ありがとう」
プロロ
ー
グ 「
貴方の夢に、
お邪魔させてもらう」
呪文を唱え
、
少女は他人(
ひと)
の夢の中へ、
足を踏み入れ る
。
はらり
、
と少女の目の前に、
青い花びらが舞う。
視界一面に広がるのは
、
咲き誇る無数の―
青い花。
何も知ら ない者が見たのなら
、
たちまち見惚れるだろう美しい花畑。
し かし
、
彼女はそんな花々
を、
鋭い眼光で睨み付ける。
少女は何か探しているのか
、
辺りを見渡す。
そして、
ともす れば頭の芯がぼやけるような
、
強烈に甘い匂いが漂う花畑の中 まだ冬の気配が色濃い春の始め
、
君は突然、
僕の前から姿を 消してしま
っ
た。
桜が咲いたらお花見をしようね
、
と約束していたはずなのに、
どこかに行
っ
てしまっ
た。
同じ空の下、
何食わぬ顔で元気にし ているのか
、
それともふとした拍子に開いた異世界へ通じる穴 とか扉から向こう側に行
っ
てしまっ
たのか。
いくら探しても君は見つからず
、
僕はその過程で心をおかし くしてしま
っ
たらしい。
岩戸隠れの名探偵
僕は名探偵だ
。
どんな難事件もたちどころに解決する
。
最短は一時間で、
多 くは二時間で
、
最長でもワンクー
ルで。
「
犯人は、
あなたですね」
指を突きつける
。
泣き崩れる犯人。
涙ながらの告白。
動機は借金
、
痴情の縺れ、
脅し脅され。
いつものようにワン パタ
ー
ン。
北海道妖怪奇譚
後輩書記とセンパイ会計
、
北方の小人に挑む 開架中学一年
、
生徒会所属、
有能なる書記のふみちゃ
んは、
時代が違えばアイヌ語の研究に生涯を捧げた民俗学者
、
金田一 京助
(
きんだいちきょ
うすけ)
とともにアイヌ文化の調査に励 んでいただろう
。
ふみちゃ
んは小学生時代、
お父さんが集めて いた日本各地の民族楽器を六年間でだいたい演奏できたほどの