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 寄せて返す波に逆らうように水面が揺れた
        
きたぞ
                     
 その声に皆が反応して集合する
             
 水面に浮かびあが
た黒い影
円形に広がる波紋の中心から 
は透明な糸がぴんと伸びている
              
今だ
                        
 そう叫ぶとヨ
チンは一気にリ
ルを巻いた
      
 負けじと黒い影が糸を引く
飛沫が飛び散る
水玉のひとつ 
ひとつに太陽の光がきらきらと反射する
まぶしいなあ
と目 
を細めている間に
チンと影との戦いには決着がついてい 

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 旧運河の西側
ビンネンワ
テルスロ
ト地区の小高い丘の 
上に
広大な敷地を持つ一軒の屋敷がある
三角形の切妻屋根 
を持つ伝統的なネ
デルラント様式の屋敷で
丈高の窓に
東 
洋の織物を惜しみなく使
たカ
テンが揺れている
     
 この日
クラ
フリ
スは
対岸の菩提樹の木陰に 
腰をおろして
この屋敷の様子を窺
ていた
デルフトの冬に 
は珍しい晴れた朝で
眩しいほど真
白な日差しが斜めに差し 
込んでいた
                       
 クラ
スは
右脇に抱えたキ
ンバスを
左側に持ち返ると
手袋をはめなおした
立ち上が
タバ
ルトのイタチの毛 

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 ゴ
ルデンウ
クも終わ
た初夏の日
ひとりの青年が
 
ぶ台の置かれた部屋の窓際で寝そべ
ている柴犬を撫でて 
いた
不自然なく
けれども少し着崩れがある着物姿からは
 
彼が普段からそれを着慣れているというのがわかる
     
 ふと
柴犬が起き上が
て口を開いた
          
俺ち
とコンビニ行
てタバコ買
てくるわ
    
 普通であれば
犬が人の言葉を喋るだなんて驚くような事な 
のだが
青年は全く驚く様子も見せず
棚に手を伸ばして風呂 
敷を取り出す
                      
                             

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潜入                     
                             
 
ガマニシオン連邦国領アフ
オセム自治区ガドネリ魔田  
                             
                     
 半月が微弱な明かりを放つ夜空に
野太い声の欠伸が響く
 
 その発声元は
一人の獣人からであ
犀の妖魔であるラ 
イノス族特有の
分厚い装甲の如き肌の上から
更に甲冑を着 
込み
手には先端が斧にな
たポ
ポン
ハルバ
を把持し
だらしなく肩に立てかけている
         

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 東茂樹は夢を思い返していた
              
 それは夢だということは分かる
ぼんやりとした端緒があ
 
けれどもそれを掴もうとすると
途端に霧散してしま
そして散
た傍から再び纏まり
曖昧な輪郭を形成した
茂樹 
は夢を追う
夢を見ていた
そのことは確かだという感覚が 
だが靄のように茂樹の手を逃れ続けた
本当に夢を見 
ていたのだろうか
確信は揺らいだ
気付くと茂樹はただ暗闇 
の中に佇んでいた
                   
 茂樹は目を開けた
足下では暖房器具が効いている
しかし 
部屋の空気はひんやりと心地好か
茂樹は机に向か
て座 

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 都から美濃国へと向かうには
近江路をまず東へ
瀬田の長 
橋を渡り
鏡山を越え
老曾の森を通る
ここまでや
てくる 
と伊吹山から吹き下ろす山風がにわかに強くなる
土の濃い匂 
いのする風だ
                    
 夏の初めであ
山の青葉はもくもくと生い茂り
山風が 
吹くと梢が銀色に波打つような時分である
海道沿いに広がる 
田には水が入
たばかりとみえ
山風にさざ波を立てていた
 
泥の匂いも濃く
蛙の鳴き声も随分と大きくな
     
 僧
光陰が諸国行脚の身となり
嵯峨清涼寺を出てから一
 
月余りが過ぎていた
目指す美濃国野間庄内海は目前に迫
て 

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